RUN for UTMB®︎あるいは僕の、走ることについて語るときに僕の語ること。

2018年UTMB®リタイアからはじまる50代トレイルランナーの挑戦記。

UTMF2022参戦記  テールエンダーから見たUTMF #6 U5〜U6

朝霧の精進湖を出発する前に眠気覚ましのカフェインを投入。
しばらく単調なロードが続き、ときどき樹海を通る。じわじわ上る長いロードでは、吐き気もあってときどき歩きを入れながらしか走れない。精進湖でしこたま水を飲んだため尿意をもよおす。がまんして鳴沢氷穴売店でトイレを借りる。尿の色は正常に戻った。自販機で水を購入してフラスクを満たす。天気がよく、気温も上がってきた。紅葉台を上る景色が第1回を思い出す。あの年は、五湖台が最後の上りで、あとは河口湖に下りてゴールだった。しかし今回は五湖台で、まだ半分を過ぎたところ。勝負はまだまだわからない。10年前と同じく、冠雪した富士山が鮮やかに見えて写真を撮り、しばし小休止。胃はやや痛みはあるが、なんとか持ちこたえている。

河口湖町に下りて、今回初めて登場する富士急ハイランドエイドに到着したのは11時50分。エイドには選手はまばらで、一瞬関門時間が近いのかと警戒したがそうではなかった。ドロップバッグを受け取る。ドロップバッグを受け取って、まだ体力気力があることがうれしい。汗もかいて不快なため着替えをするためテントに向かう。スタッフ氏から仮眠するかと尋ねられ、着替えだけしたいと答えると四方が塞がれたテントに案内された。中には3名の先客がいた。中には明らかにアフターウエアに着替えている人がいて、心中を察する。自分も何度、その無念を味わってきたことか。こういう場では何も話さないことが大人の嗜みである。木製の荷物パレットがベッド代わりに床に置かれていて、その一つに陣取る。1人1パレットあるため、余裕をもって着替えられた。全身をウエットタオルで拭きさっぱりさせ、短パンと帽子以外はすべて新品に着替える。これだけでずいぶんリフレッシュされるものだ。特に晴天の昼間なので、余計にすっきりする。例えばこれが、深夜の雨の中であったら寒さと湿気で、それほど気分転換にならない。かつての上州武尊がそうだった。

テントを出て、飲食物を物色するが、あまり食べたいものがない。水を補給して、あんパンを半分食べる。ドロップバッグに用意した補給食は、胃が気持ち悪くてどれも食べる気がしない。空腹感は無く、体力気力の減衰も感じられないためトイレを済ませる。エイド空間が広いせいか、ほんとうに選手が少なく見えて寂しい。スタッフの人も手持ち無沙汰そうだ。1時間ちょっと滞在して13時過ぎにエイドアウト。フーディニは脱いでTシャツ1枚でちょうどいい。

数キロ行くと『道の駅富士吉田』がありピットイン。自販機で水を購入してその場で飲む。冷えた水が胃に染みる。道の駅を出て、道を横断しようとしたころ、停車中の車から自分の名を呼ばれる。車を降りて駆け寄って来たのはTコーチだった。東京から応援に来てくれたのだ。僕の位置を確認してあたりをつけて待っていてくれたのだと思う。思いがけない再会に感激する。「いい顔してますよ。いけます、いけます」と励まされる。胃をやられたこと、それでもなんとか持っていること、カフェインが効いていることなど、いまの自分の状況を訴える。Tコーチは、頷きながら聴き「行けます、行けます」と完走に向けてポジティブに鼓舞してくれる。トレランコミュニティにほとんど知り合いがいない僕は、こうしたことに慣れていないので、ずいぶん励まされた。2割ほどエネルギーがチャージされたような気分になって、お礼を言って別れた。

U6忍野まで難所はないが意外と時間がかかった。空には雲がかかってきて、すっかり日が傾き時刻は17時を過ぎて気温も急激に下がってきた。トイレに行き、水を補給。出発するランナーをエイドスタッフが拍手で送り出すのを1人2人と見送る。胃は不調のままだが、走れないことはない。きららまでひと山。ヘッデンを用意して、フーディニを着て出発した。