RUN for UTMB®︎あるいは僕の、走ることについて語るときに僕の語ること。

2018年UTMB®リタイアからはじまる50代トレイルランナーの挑戦記。

2月11日(月祝)夫婦で雪中ハイク

 毎年ある、というわけではないが、今日は「夫婦でハイク」の日。
昔「夫婦でワイン」というコピーがあったが、それはわが家の場合毎晩に近い日常のことなので、わが家では取り立ててのコピーにはならない。でも、夫婦でハイクあるいは家族でハイク、は意外と少ないのだ。ほんとに、意外と。

 そんなわれわれにとって2月の週末は、図らずも「いい夫婦の日」になることが多い。なんでだろう。割とこの時期仕事もゆるやかで、僕自身はレースも無いからなのかな。まだシーズンが始まったばかりで余裕があるからかもしれない。

 昨年は、ふたりが大好きな、故小津安二郎監督を偲ぶ旅に尾道を訪ねた(小津監督が泊まった部屋に泊まり、原節子が泊まった部屋で朝食をいただいた)。一昨年はドカ雪が「降ったから」わざわざ(皆が行かない)三朝温泉に行った。

 で、今年は僕の病み上がり(正式には途上だが)を祝して六甲山を歩くことにした。昨日は好天のなか、単独で塩屋から新神戸をコンプリート。で、今朝起きると、なんと外は雪。市街は積もる気配はないが、山を仰ぎ見ると、みるみる白く染まっていく。

 さて、どうするか。

 とりあえず朝食をゆっくり食べて考えることにする。

 決定権は、この場合もちろん弱者(家人)にある。昨日も書いたが、彼女は数十年前はアマチュアトップのトライアスリートだったが、数年前の東京マラソンで膝を壊して、いまはまったく走ることを休止しているばかりか、運動といえるすべての事を回避した生活を送っている。膝に負担のかからない水泳と、年に二度か三度の山歩きが関の山である。積雪ハイクは過去にしたことはあるが、果たして今日がその日であるかどうかは本人の体調と気分次第である。

 朝食を終えて、なお思案する。娘お花のリクエストで今日中にケーキを焼いて送る、というミッションも家人はこなさなければならないらしい。となると、疲れすぎてもいけないし、午後4時には帰宅しておかなければならないという。

 僕が想定しているルートなら、ゆっくり歩いても午後4時には確実に帰ることは可能。最悪途中で体調が悪くなれば引き返せばいい。そう見通しを話すと、ようやく意を決したように「行く」となった。

 目指すルートは、新神戸〜布引の滝〜市ケ原〜摩耶山摩耶山からはロープウエイとケーブルカーで麓に降りて電車で帰る、という計画だ。ゆっくり歩いても、昼頃には山頂に着く。市ヶ原から摩耶山までは距離はたいしたことはないが、上りごたえがあるので、山頂のカフェでランチをして帰れば十分満足感はあるだろう。そうと決まれば準備を整えて出発だ。午前9時過ぎにホテルをチェックアウトして山を目指した。

 僕自身も昨日の疲労が脚に出ていて、ゆっくり歩くことに異存はない。なにしろ病み上がり(途上)でいきなり2日続けての歩荷ハイクである。無理して後戻りするのは、あってはならない。

 歩き始めは雪が止んでいた。このまま今日はもう降らないのだろうか。そう思いながら最初の長い階段をゆっくり上り、布引の滝に着く。昨日にも増して水量が少ない。滝の上流は凍っているのかもしれない。貯水池に着く頃には雪がちらほら舞ってきた。市ヶ原でトイレ休憩をして、いよいよ摩耶山までの上りに取り付く。裏六甲への分岐を右に折れ、本格的な上りに入る。しばらく歩くとトレイルの両側や木々の葉に、積もる雪が見られるようになってきた。さらに高度を上げる。ふたりとも足の運びに不安はない。ひとつめのピークに差し掛かる頃から、だんだん積雪が増えてきた。尾根の向こうに見える向かい側の山の木々も、いつの間にか白く染まっていた。ふたつ目のピークを目指す頃には、トレイルはすっかり雪景色となった。降り始めから続く雪が足元の道を覆うようになってきた。降ったばかりの雪は、ふわふわと軽く、シューズを濡らすことも少ない。六甲山系で、さくさくと新雪を踏みしめて歩ける日なんて、ひと冬にそうあるものではない。今日は、非常にラッキーな日であることを実感する。踏み跡を見れば、先行者は何人かいることがわかるが、先行者が歩いた跡に降り積もる新雪でトレイルは新たな雪道をつくってくれ、まるでわれわれが初めて足跡を残すかのような気分にもなれて気持ちがさらに昂ぶる。

 アップダウンを繰り返し、曲がり道を回るたびに新しい景色に出合い、そのたびに写真に収めたくなり立ち止まる。風もなく、雪は空からまっすぐに降りてくる。何度か着ているレイアリングを変えて温度調節も行い、いまは雪景色のなか快適に歩くことができている。なかなかこんな状況では歩けないことに感謝して歩く。

 最後のゴロゴロ坂を上る。家人はさすがに疲れがでてきたようだが、それでも歩くことの楽しさは満喫できているようだった。最後の階段を上ると、そこは一面雪の絨毯が敷き詰められていた。麓からたった6km、3時間弱でこれほどまでの感動を味わえるなんて、本当に贅沢でありがたいことである。

 摩耶山・掬星台も一面見事な雪野原。お腹もいい具合にすいてきて、目指してきたロープウエイ2階にあるカフェでカレーライスをいただくことにする。心地よい疲労感がじんわりと癒やされていく。このご褒美があるから、山歩きが一層魅力を増す。これこそが六甲山が六甲山として、「おらが山」として、市民に愛され続ける所以である。歩いた人にだけわかる、この充実感。たまたま、そんな日に巡り会えたことに感謝。どん底からの練習再開は、どうやら神様から祝福されているように思えた。


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